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金融行政方針を踏まえた金融機関の人的資本経営のポイント

2022事務年度金融行政方針が8月31日に公表されました。

 

「1.経済や国民生活の安定を支え成長へつなぐ」「2.新たな成長が国民に還元される金融システムを構築する」「3.金融行政をさらに進化させる」といった3つの大きな柱に区分した構成となっています。ここでは金融機関における人的資本経営に焦点をあてて紹介をいたします。

 

金融行政方針においてはじめて「人的資本」のワードが出現したのは昨年の2021年度のことです。その2021年度においても「金融審議会ディスクロージャーワーキング・グループにおいて、取締役会等の活動状況、人的資本への投資等に関する開示のあり方を検討する」という検討する文脈での出現しかありませんでした。

 

2022年度の方針においては随所に「人的資本」のワードが見られるようになりました。2022年6月に首相官邸から発表された「新しい資本主義」にむけた計画的な重点投資でも第一番目の項目として人への投資と分配がかかげられ、また、同時期に公表されたディスクロージャーワーキング・グループの報告においても「人的資本・多様性に関する開示」を積極的に行っていくよう提言がありましたが、それと呼応する内容となっています。

 

金融機関が「1.経済や国民生活の安定を支え成長につなぐ存在」として意義を発揮していくことをうながすために行われるモニタリングでは、昨年に引き続き金融機関が「持続可能なビジネスモデルの構築をすること」の重要性が指摘されています。これは金融機関の収益性の向上が急務であることを示唆したものといえるでしょう。

 

また、「持続的な価値創造を支える基盤は金融機関の人的資本である」と、人こそが価値創造の源泉を作るものという指摘がされています。これまで企業は人をコストとみなしてきた側面はいなめませんでしたが、その視点から脱却し、人に対して投資や教育を行うことで価値を作ることの重要性が強調されています。そして「各層の役職員との対話を通じて、金融機関の人的投資や人材育成の取組みを促していく」とあるように、金融庁が施策を主導するのではなくあくまでも各金融機関が自らのビジネスモデルに沿って自分たちで考え、実行していくことが求められていることが読み取れます。

 

「2.金融システムの構築」では「コーポレートガバナンス改革と人的資本を含む非財務情報の開示の充実」として人的資本の情報開示の重要性について指摘されています。とくに人的資本が企業の持続的な価値創造の基盤になることについて企業と投資家との間で共通の認識を持つことが重要であり、積極的な対話を促すものとなっています。

 

日本全体で人的資本経営の重要性についての機運が高まっている中で、金融機関の経営においても例外ではないことを再認識させられる内容となっています。各金融機関が自分たちのそれぞれの強みを認識したうえで経営戦略をさだめ、その経営戦略と人材戦略を連動させて顧客への価値創造を行うというサイクルを生み出すことが重要です。それには企業側が適切な機会や環境を提供し人材価値を上昇させる必要性があります。人材価値を上昇させることができない企業は採用に苦戦し、人不足が経営悪化に拍車をかける中で、金融機関においても人的資本経営に舵を切る必要がある時期であることを改めて感じるところであります。

 

■参考
金融庁 2022事務年度金融行政方針について